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糖尿病・注射薬の現状

医療・疾患

前回の更新で、注射薬であるGLP-1受容体作動薬について取り上げました。

今回は、そのGLP-1受容体作動薬の一つであるトルリシティについて注射薬の進歩の観点から書いてみたいと思います。

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トルリシティは、昨年の9月ごろに発売されたばかりの新しい薬です。

注射薬ですが、投与回数は週1回で済む利点とともに注射器もインスリンを含む糖尿病用注射薬で初めて自動注入器(オートインジェクター)を採用している点が特徴です。

オートインジェクターでは、注射針は元々注入器に取り付けられており、注入ボタンを押すことで自動的に注射針が皮下にささり、あらかじめ1回量が充填されている薬液が注入されます。注射が完了したら注射針が注入器の中に自動的に戻ります。今までの注射薬は、患者自身が薬剤を溶解したり、用量を設定したり、注射針を取り扱ったりする必要がありましたが、オートインジェクターにはその必要がありません。また、自己注射中に注射針も見えません。

 

以下に使い方の手順を示します。

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操作が簡単になったため、患者さんの負担は減ることになるでしょう。

 

ちなみに正式名は「トルリシティ皮下注0.75㎎アテオス」と言いますが、

「アテオス」とは「当てて押す」という意味だそうです。

GLP-1受容体作動薬・注射

医療・疾患

糖尿病治療薬で注射といえば、インスリン注射のイメージがありますが、

実はもう一つ注射薬が存在します。

それが、GLP-1受容体作動薬と呼ばれるものです。

 

GLP-1とはインクレチンというホルモンのひとつ。

以前に取り上げたDPP-4阻害薬でも、インクレチンはキーワードとして登場しております。

http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/06/09/215037

 

インクレチンは、膵臓に働きかけてインスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制の2つの働きにより、血糖値を下げさせるホルモンです。

インクレチンの働きは、食事応答性のためDPP-4阻害薬もGLP-1受容体作動薬も食後血糖値を主に下げ低血糖を起こさない、理想的な血糖の下げ方を実現します。

DPP-4阻害薬が、元々体内にあるインクレチンを活かすのに対して、

GLP-1受容体作動薬は注射によって、外から分解されにくいインクレチンを補充してあげるやり方です。

DPP-4阻害薬よりもインクレチンの濃度を高めることができるため、血糖値を下げる力は強く、また体重減少効果もあると評価されております。

また、同じ注射でもインスリン注射と違って低血糖の心配はあまりありません。

 

ただ、注射薬のため患者さんの抵抗が大きいこと、医療費が高くなることがデメリットとなります。

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現在日本で発売されているGLP-1注射薬の特徴についてまとめてみます。

大きく分けて、短時間型・長時間型に分けられます。

短時間型

1日2回タイプです。

・バイエッタ

・リキスミア

朝・夕食前1時間以内に注射しないと効果が期待できません。

強力な胃内容物排泄遅延作用があり、食後の血糖上昇を抑える働きが特に強いと言われています。

長時間型

1日1回タイプと週1回タイプがあります。

投与間隔に差がありますが、製剤の特徴が似通っているので長時間型と分類されます。

・ビクトーザ

1日1回タイプです。

この薬剤を使った海外の試験で心血管イベントによる関連死を抑制できたというデータが出ており、GLP-1受容体作動薬の代表的な薬となっています。

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・ビデュリオン

・トリルシティ

週1回タイプです。

長時間型は、胃内容物排泄遅延作用は弱く、主に空腹時血糖を低下させる力が強いと言われています。

 

以上です。

注射薬ということで抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、血糖値が改善すれば飲み薬にステップダウンすることも可能です。

血糖値が長期間改善しない方や異常に高い方などにとっては、役に立つお薬なのではないでしょうか。

 

 

C型肝炎は飲み薬で治る時代

医療・疾患

C型肝炎治療が劇的によくなっていることをご存知でしょうか。

 

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そもそもC型肝炎とは、HCVウイルスに感染することで起こる病気です。

HCVウイルスは血液感染によって感染すると言われておりますので、握手や入浴などの日常生活によって感染することはありません。

以前は予防注射の回し打ちやウイルスチェックが十分でない輸血、血液凝固因子製剤の使用などで感染するリスクがありましたが、現在では刺青や覚せい剤注射、病院での針刺し事故などでないと感染する可能性は低くなっています。

そのため、新規発症患者は少なくなっているのが現状です。

 

治療に関してですが、以前はインターフェロン注射による治療が一般的でした。

インターフェロンとは元々体内にあるウイルスを攻撃する物質です。

このインターフェロンを注射で補充することにより、HCVウイルスを叩きます。

ただし、発熱などの副作用がほぼ100%起こりますし、治療有効率も40%~70%ぐらいとされていました。

治療期間が6か月から1年間かかりますので、特に副作用で苦しむ患者さんも多かったようです。

 

しかし、2年前にダグルインザ/スンベプラという薬が発売されました。

この薬はインターフェロンがいらず、経口薬のみで治療でき副作用が少ないという画期的な薬剤です。しかも、有効率は80%以上。

この薬によって、C型肝炎治療は格段に行いやすくなりました。

さらには、ハーボニー、ヴィキラックス、エレルサ/グラジナといった次の世代の経口薬も登場し、有効率はほぼ100%、治療期間も12週と短縮されています。

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このC型肝炎の領域をみていると医療の進歩はすさまじいものです。

恩恵を受ける患者さんも非常に多いと思われます。

 

ちなみにこの経口剤もお約束通り高薬価。

ハーボニーの薬価は1錠54,796円もします。

12週間の治療で薬代だけで約460万円かかる計算です。

C型肝炎治療は国からの助成があるため、患者さんは月の自己負担が1万円もしくは2万円で受けることができます。

その分、保険医療ですので国や保険者の財政が逼迫することになります。

C型肝炎は、発症率が減っている疾患ですので、一時的な支出にとどまるだろうと思われるのが救いでしょうか。

 

 

インフルエンザワクチン

医療・疾患

先週号の週刊文春にインフルエンザワクチンのことが特集されておりました。

ch.nicovideo.jp

 

見出しでは「インフルエンザワクチンが71人に1人しか予防できない」と煽っていますが、記事の中身を読むとだいぶ抑制的で、打つべきだという医師と打たなくてもよい、むしろ有害だという医師の見解が両論示されています。

 

「71人に1人」というデータは海外で発表されており、ワクチンを打った人と打たなかった人の両群間でインフルエンザへの罹患率の差を比べたところ、「1人のインフルエンザを防ぐのに、71人がインフルエンザワクチンを打つ必要がある」と結論付けられているところからきています。

 

インフルエンザワクチンは、子供のほうが効果がより高いと言われています。

子供は大人に比べ、以前にインフルエンザに罹ったことが少ないため、免疫がないケースが多いことがその理由です。

一方、高齢者もインフルエンザに罹ると重症化する危険性があります。

 

インフルエンザワクチンを打ってても、インフルエンザに罹ることは普通にありますが、打つにこしたことはないだろうというのが、この記事を読んでみた私の感想です。

見出しにまどわされずに、とりあえずインフルエンザワクチンを接種することをお勧めします。

 

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最後に、記事ではインフルエンザワクチンを接種すると医療機関が儲かるという側面を紹介しています。

しかし、特に内科医では保険診療による収入が圧倒的に多く、インフルエンザワクチンによる儲けは微々たるものです。

誤解を招く表現だなと感じました。

 

 

オプジーボ半額に

医療・制度

画期的ながん治療薬・オプジーボについては以前の更新でも取り上げました。

抗がん剤1剤で年間2兆円?? - MR&中小企業診断士ブログ

http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/08/09/145347

 

この薬が画期的なのは以前の更新でも取り上げたとおりなのですが、問題は薬価の高さ。

オプジーボだけで患者1人当たり年間3500万円かかると言われています。

このままでは国の社会保障財政にも影響があるということで、薬価が緊急的に半額に下げられるというニュースが先日発表されました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161117-00000087-san-soci

 

通常、薬価改定は2年に1回行われることになっており、次回は2018年4月の改訂で薬価が引き下げられるのですが、国が待ってられないということで緊急的に来年2月に薬価引き下げ、それも半額に下げるという措置を取ることになったのです。

 

薬価がいくらになるかは製薬会社としては収益に直結しますので、薬価引き下げに対して販売会社である小野薬品だけでなく他の製薬会社も反発しています。

今回のように例外的な薬価改定が今後も行われていくと、他人事ではないからです。

 

そもそも薬価とはどのように決まっているのでしょうか。

以下の2つの決め方があると言われています。

①類似薬がある場合は、その薬の薬価を参考に同じくらいの薬価がつけられます。

 (海外での販売が先行している場合、海外での薬価も参考にします。)

②類似薬がない場合は、開発費・製造原価などに利益を加算して薬価がつけられます。

 オプジーボは②の決め方になります。

薬価が高額になった理由は、まず開発費が多くかかっていること。

そして、承認当初は想定患者が少ない悪性黒色腫(皮膚がんの一種)の適応で利益を確保するため高い薬価がつけられました。

しかし、去年12月に肺がん、今年8月には腎細胞がんにも適応が拡大されたため、想定患者が一気に増え国も無視できなくなってしまったのです。

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今回はこのように特殊事情があるので、緊急的な値下げもやむを得ないでしょう。

製薬会社も表向きには反対していますが、本音ではそう感じているはずです。

 

下肢静脈瘤

医療・疾患

下肢静脈瘤について今回は取り上げます。

下肢静脈瘤では、以下のように脚の血管が浮き出ているような症状が出ます。

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立ち仕事をしている女性に多いと言われていますが、良性疾患なのですぐに危険がおよぶわけではありません。

 

そもそもの話からですが、血管には動脈と静脈があるのはご存知かと思います。

簡単に言えば、動脈は心臓から血液を全身へ運ぶための血管、静脈は全身の血液を心臓の戻すための血管です。

静脈には動脈にはない弁がついていること、動脈性疾患は血管そのものが狭窄したり詰まったりする疾患が多いのに比べて、静脈性疾患は血栓ができその血栓が様々な血管に飛んでいくことで引き起こされる疾患が多いのが特徴となります。

 

静脈の構造を見ていきましょう。

以下の図のように静脈には、深部静脈と表在静脈があります。

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血液は深部静脈を通って、心臓に戻っていきます。

深部静脈は脚の中心部を通っているのに対して、表在静脈は深部静脈から枝分かれし脚の皮膚表面の近くを通っています。

 

静脈性疾患で、命に関わるのは深部静脈です。

深部静脈で血栓ができてしまうと、肺動脈に飛び肺動脈を詰まらせる肺血栓塞栓症(PTE)などを引き起こしてしまい命の危険が起こります。

一方、表在静脈はすぐには命には関わりません。

下肢静脈瘤は表在静脈に関連する疾患なので良性疾患と言われるのです。

とは言っても、表在静脈にできた血栓が深部静脈に移動してしまうこともあります。

 

見た目以上に過度に心配する必要はないですが、病院で診察してもらってケアすることは大事でしょう。

 

 

高安病

医療・疾患

日本人の名前がついている疾患は珍しいのですが、その1つが高安病です。

英語表記でも、「Takayasu arteritis」となっています。

現在の金沢大学医学部の眼科教授であった高安先生により、脈が触れず虚血性網膜症をきたす疾患として、報告されたため、この名前が付いています。

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(高安右人先生)

 

どんな疾患かというと全身の動脈に炎症が起こり様々な症状がおこる疾患です。

原因は不明と言われていますが、自己免疫疾患によるものと考えられています。

また、特に日本人の若い女性に多いと言われております。

 

どんな症状が起こるか以下にまとめてみます。

一部の動脈だけでなく、全身の動脈に炎症が起きてしまうので、症状も多岐にわたります。

・脈が触れない

・血圧上昇

・血圧の左右差および下肢・上肢の差

・めまい、頭痛、失神

・失明

・狭心症・心筋梗塞

・発熱

・動脈瘤の形成

 

治療は、ステロイドや抗血小板薬による対症療法が中心です。

狭窄がひどい場合は外科手術やPTA(経皮的血管形成術)が行われます。

このように非常に厄介な疾患ですが、

他の疾患と同様、早期発見によって予後はだいぶ良くなります。

 

特効薬はない現状ですが、診断技術も進歩しているので、日ごろの健康診断をしっかり受けることがやはり重要なのでしょう。