DAA製剤の効果

先月の更新で取り上げたC型肝炎治療薬について、掘り下げてみたいと思います。

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以前は、インターフェロンという注射剤を用いる治療が一般的だったC型肝炎治療ですが、現在は新薬の登場により治療薬がガラッと一変しております。

その新薬のことをまとめてDAA製剤(Direct Acting Antivirals:直接作用型抗ウイルス薬)と言います。

DAA製剤は、その名の通り直接的にウイルスの増殖を抑えることで根治を目指す治療薬です。

今までは、インターフェロンというウイルスを攻撃する物質を体内に補充することで治療していたわけですが、インフルエンザ様症状がほぼ必発しておりましたし、治療期間も6か月~1年間かかっていました。

また、ある程度の体力も必要で高齢者などは治療できなかったのが実情でした。

DAA製剤の登場によって、副作用はかなり少なくなり、治療期間も12週に短縮、治療効果もほぼ100%、しかも飲み薬ということで今まで治療できなかった高齢者を含めて格段に治療がしやすくなったのです。

 

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上図はC型肝炎ウイルスを表しておりますが、ウイルスの遺伝子配列を切ることでウイルスの増殖を抑えていきます。

NS3、NS5A,NS5Bといった遺伝子配列に作用しますが、どの遺伝子に作用をするかは各薬剤によって異なっています。

どの薬剤にも共通することは、1つの部分だけ作用してもウイルスはすぐに耐性を獲得し、薬剤が効かなくなるので、複数の部分に作用することでウイルスに対抗しています。

 DAA製剤と呼ばれるもので、ダグルインザ/スンベプラは一番早く発売されておりましたが、治療期間が24週、耐性変異ウイルスによって感染している患者さんに対しては治療効果が4割程度に落ちてしまうということでほぼ使われなくなっています。

他のハーボニー、ヴィキラックス、エレルサ/グラジナに関しては治療期間が12週に短縮され、耐性変異ウイルスに対しても十分な効果が期待できるということでこちらが現在は主流になっているというのが現状です。

 

 

新薬創出加算

前回の更新に引き続き薬価の話を。

薬価は2年ごとに薬価改定が行われ、基本的にはその度に切り下げられていくのが普通です。

しかし、それでは製薬会社の収益が上がりにくいだろうということで2012年の診療報酬改定で導入されたのが、「新薬創出加算」です。

この新薬創出加算は、各製品ごとに認可されており、対象となった品目は特許期間まで薬価が下がりにくい仕組みとなっています。

 

2012年〜ですので、比較的最近導入された制度です。

その理由としては、昔と比べて後発品の普及が一気に進み、製薬会社の収益が上がりにくくなっている時代背景が挙げられます。

開発した新薬で確実に稼いでもらって、次の新薬の開発を進めて欲しいという国の意図があるわけです。

 

詳細を下に示します。

 

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縦軸が薬価、横軸が時間(年数)を表しています。

通常の薬価推移は点線部分のイメージで、年数が経つにつれ徐々に切り下げられていきます。

それに対して、新薬創出加算の対象となっている品目は実線のように、後発品発売までは薬価切り下げが猶予され、後発品発売後の最初の薬価改定で今まで猶予されていた価格が一気に切り下げられるという仕組みです。

 

つまり、後発品が出てくるまでの期間は薬価が守られるのでその分稼いで下さい、ただし後発品が出たらあきらめてね、というわけです。

 

新薬創出加算の対象となるにはいくつか要件がありますが、そのうちの一つに市場実勢価(卸から医療機関への納入価のこと)が全品目の平均値よりも高いことという条件が入っています。

つまり卸が安売りをしているような品目は対象から外されます。

薬価を守るために、製薬会社は卸に安売りをしないようにお願いしている(圧力をかけている??)という状況が現場では展開されています。

薬価改定について

先日の更新で、オプジーボというがんの薬の薬価が緊急的に半額に切り下げられるという話を更新しました。

frontia.hatenablog.com

http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/11/20/235526

今日はそれに関連して、一般の人には馴染みが薄い薬価改定の仕組みについて書きます。

 

通常、薬価改定は2年に1度行われます。

特例的な薬価引き下げを除けば、卸が医療機関や調剤薬局に薬を納入する際の価格(市場実勢価格)を調査し、その価格の加重平均値消費税調整幅2%をプラスして新薬価が決まります。

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そもそも薬は「医薬品メーカー⇒卸⇒医療機関・調剤薬局⇒患者」という流通ルートとなります。

国が決めている薬価はあくまでも医療機関・調剤薬局から患者に対して提供される際の価格のことであり、卸から医療機関・調剤薬局に納入される価格は価格交渉によって決定されます。

通常は消費税抜きで薬価の85%~90%で納入されることが多くなっています。

この価格を厚生労働省が抜き打ち的にサンプル調査を行って、いわゆる市場実勢価格として、次回の薬価改定の参考値となるという仕組みです。

納入価格が薬価より高くなることはありえないので、普通は薬価は引き下げられます。

製薬会社にとって問題はどの程度引き下げられるか。

 

安売りをしている薬は次回の薬価改定で薬価を大きく引き下げられるので、薬の売り上げはよりダウンしてしまいます。

ですので、製薬会社は卸さんに出来るだけ高く売ってもらいたいと思っているのですが、一方で競争が激しい分野の薬は医療機関が求める納入価の値下げを受け入れないとライバル会社に取られてしまいます。

 

昔は納入価をどんどん下げていく傾向が強かったのですが、最近は厚生労働省の方針も影響し、納入価はできるだけ高くしようという流れにはなっています。

MR活動の監視制度

今月より、MR活動を監視するための「広告監視モニター事業」が開始されました。

実施主体は厚生労働省。

一般の方には関係ない話で恐縮ですが取り上げてみたいと思います。

 

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MRの仕事は自社の医薬品に関して、適正な情報を提供することです。

有効性はもちろん都合の悪い副作用関連の情報もしっかりと情報提供しなければなりません。

薬に関わることですから適応外使用や裏付けのない情報を提供することはご法度で、勝手にMRが資料を作成して医師や薬剤師に提供することは禁じられており、それぞれの製薬会社が責任を持って許可を取ったパンフレットや資料を用いて情報提供活動をしております。

しかし、同時にMRの仕事は営業という側面もあります。

自社医薬品が売れなければ会社から評価はされません。

MRも自社品が売るために、本来は行ってはいけない活動をやっている場合少なくないのが現状です。

 

違反事例は、内部告発や他社からの指摘によって発覚することが多くたびたび報告されています。

しかし、それだけでは不十分とそんな活動を監視するために厚生労働省がモニター制度を導入しました。

情報提供を受ける医師や薬剤師の中に協力者を潜ませておいて、違反と思わしき事例があった場合は報告するようお願いしているのです。

もちろん誰が協力者かはMRにはわかりません。

 

正直言ってMR活動はやりにくくなりますが、それはMRにとっての話。

医師の中にもMRからの情報を頼りにしている方は多いと思われますが、患者さんへの影響はほとんどないと言って良いでしょう。

鹿児島・熟成肉

今日のグルメ情報は、鹿児島市にグループ店を3店持つ「Gyu do」(ギュウドウ)を取り上げます。

店舗によって微妙にメニューは違うようですが、売りは熟成肉の焼肉です。

自社牧場の肉を使用しており品質はしっかりしています。

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焼肉は高級になればなるほど霜が降ってくるので、私なんかは胃もたれがしてたくさん食べれません。

その点、熟成肉は脂身が少ないので食べやすい。

鹿児島では珍しい上、味もおいしいので、焼肉好きにはおススメです。

しかも値段は夜でもしっかり食べて5000円程度とリーズナブルです。

 

そして、ランチではハンバーグも扱っていますが、これもおススメ。

ミンチがごろっとした食感があって、ソースも味が抜群です。

値段も1000円ちょっとなのでこちらも食べてみる価値ありです。

 

Gyudo (ギュウドウ)

鹿児島県鹿児島市東千石町12-13

https://tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46008418/

 

 

 

 

 

 

 

糖尿病・注射薬の現状

前回の更新で、注射薬であるGLP-1受容体作動薬について取り上げました。

今回は、そのGLP-1受容体作動薬の一つであるトルリシティについて注射薬の進歩の観点から書いてみたいと思います。

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トルリシティは、昨年の9月ごろに発売されたばかりの新しい薬です。

注射薬ですが、投与回数は週1回で済む利点とともに注射器もインスリンを含む糖尿病用注射薬で初めて自動注入器(オートインジェクター)を採用している点が特徴です。

オートインジェクターでは、注射針は元々注入器に取り付けられており、注入ボタンを押すことで自動的に注射針が皮下にささり、あらかじめ1回量が充填されている薬液が注入されます。注射が完了したら注射針が注入器の中に自動的に戻ります。今までの注射薬は、患者自身が薬剤を溶解したり、用量を設定したり、注射針を取り扱ったりする必要がありましたが、オートインジェクターにはその必要がありません。また、自己注射中に注射針も見えません。

 

以下に使い方の手順を示します。

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操作が簡単になったため、患者さんの負担は減ることになるでしょう。

 

ちなみに正式名は「トルリシティ皮下注0.75㎎アテオス」と言いますが、

「アテオス」とは「当てて押す」という意味だそうです。

GLP-1受容体作動薬・注射

糖尿病治療薬で注射といえば、インスリン注射のイメージがありますが、

実はもう一つ注射薬が存在します。

それが、GLP-1受容体作動薬と呼ばれるものです。

 

GLP-1とはインクレチンというホルモンのひとつ。

以前に取り上げたDPP-4阻害薬でも、インクレチンはキーワードとして登場しております。

http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/06/09/215037

 

インクレチンは、膵臓に働きかけてインスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制の2つの働きにより、血糖値を下げさせるホルモンです。

インクレチンの働きは、食事応答性のためDPP-4阻害薬もGLP-1受容体作動薬も食後血糖値を主に下げ低血糖を起こさない、理想的な血糖の下げ方を実現します。

DPP-4阻害薬が、元々体内にあるインクレチンを活かすのに対して、

GLP-1受容体作動薬は注射によって、外から分解されにくいインクレチンを補充してあげるやり方です。

DPP-4阻害薬よりもインクレチンの濃度を高めることができるため、血糖値を下げる力は強く、また体重減少効果もあると評価されております。

また、同じ注射でもインスリン注射と違って低血糖の心配はあまりありません。

 

ただ、注射薬のため患者さんの抵抗が大きいこと、医療費が高くなることがデメリットとなります。

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現在日本で発売されているGLP-1注射薬の特徴についてまとめてみます。

大きく分けて、短時間型・長時間型に分けられます。

短時間型

1日2回タイプです。

・バイエッタ

・リキスミア

朝・夕食前1時間以内に注射しないと効果が期待できません。

強力な胃内容物排泄遅延作用があり、食後の血糖上昇を抑える働きが特に強いと言われています。

長時間型

1日1回タイプと週1回タイプがあります。

投与間隔に差がありますが、製剤の特徴が似通っているので長時間型と分類されます。

・ビクトーザ

1日1回タイプです。

この薬剤を使った海外の試験で心血管イベントによる関連死を抑制できたというデータが出ており、GLP-1受容体作動薬の代表的な薬となっています。

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・ビデュリオン

・トリルシティ

週1回タイプです。

長時間型は、胃内容物排泄遅延作用は弱く、主に空腹時血糖を低下させる力が強いと言われています。

 

以上です。

注射薬ということで抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、血糖値が改善すれば飲み薬にステップダウンすることも可能です。

血糖値が長期間改善しない方や異常に高い方などにとっては、役に立つお薬なのではないでしょうか。