平和主義者・オバマ大統領

あけましておめでとうございます。

当ブログをお読みになっていただいている方、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

本年も医療関係の話を中心に更新していきますが、今回は全く関係ない話をします。

 

年初の大きなニュースと言えば米・トランプ大統領の就任です。

賛否両論ありますが、私は不安を覚える一人です。

このトランプ就任の前に言っておきたいのは、オバマ大統領は想像以上に偉大な大統領であったのではないかということです。

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その代表的な出来事だったのが昨年の広島訪問です。

演説原稿は官僚の方たちが作成しているのかもしれませんし、

私は英語もわかりませんが平和記念公園の前で行ったこの演説は非常に心を打たれます。

現実世界の前で核廃絶は困難な道かもしれませんが、

少なくともこの大統領は本心からこの演説を読み上げたのだろうということが伝わってきました。

 

一人でも多くの方にこの演説を聞いてほしいと思います。

そして、我々一人ひとりも科学の進歩に負けない人間の道徳の進歩を心に刻みたいものです。

 

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財前先生と里見先生

本日が今年最後の更新となります。

今年5月から始めた当ブログですが、85人もの読者登録をいただきました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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最後の話題はドラマ「白い巨塔」の考えさせられる1シーンについて書いてみたいと思います。

白い巨塔は小説やテレビドラマでご存知の方も多いでしょう。

主人公の財前先生と里見先生は同期だが、考え方やタイプが異なります。

財前先生は腕は良い外科医だが野心家で患者さんよりも自分の出世を優先する、里見先生は面倒見の良い内科医であくまでも患者さん中心の医療を常に考えている、という設定です(そんなに単純じゃない面もありますが・・・)。

そんな財前先生と里見先生が議論し合った第1話のシーンを振り返ってみます。

 

里見先生が受け持っているがん患者に外科医である財前先生が告知をします。

里見先生は患者にはまだがんであることを告知していないし、手術にも恐怖心をいだいているので、慎重に告知をしてほしいと財前先生に依頼。

しかし、財前先生は患者にあっさりと「がんですね、がんですから手術です」と伝えてしまいます。そして、「まだ早期です。自分が責任を持って手術しますから絶対大丈夫です。」と伝え、結果的には患者を納得させます。

これに里見先生が激怒して、言い合いとなるのが以下のシーンです。

 

里見先生:おい財前、一体どういうつもりだ!前もって告知は慎重にやってくれと言っ

     たはずじゃないか!

財前先生:慎重に考えて告知をしたつもりだが。

里見先生:どこが慎重なんだ!

財前先生:里見、がんはがんだ。治癒しうる。告知を渋る時代じゃないよ。

里見先生:それは外科医の傲慢だ。人間は悪いところを取り去れば元気になるわけでは

     ないだろう。患者の痛みや不安にアプローチしなければ真の治療とは言えな

     いんじゃないか。

     それに…、なぜオペをすれば大丈夫と断言した?転移がわからない段階で無

     責任じゃないか!

財前先生:転移の可能性は極めて低い。そもそも直せないかもしれないという患者に自

     分の命を預ける患者がいるのか?現に彼女は僕の言葉によってがんを受け入

     れた。手術を受ける勇気を持てたじゃないか。インフォームドコンセントな

     どといって患者に媚を売るより絶対に大丈夫という一言の方が患者は安心す

     るものだ。

里見先生:医者は神様じゃない。患者と同じ人間だ。

 

一般的には里見先生に同調される意見が多いでしょう。

しかし、財前先生のように絶対大丈夫と言い切る先生を求める患者が多いのも事実です。現場では、そんな先生の方が患者を集めているような気がします。

いろんなシーンで考えさせられる名ドラマですね。

 

医薬品販売の商習慣

今回は医薬品の独特といえる販売方法について取り上げてみたいと思います。

一部例外はありますが、通常の取引では医薬品は医薬品卸を通して医療機関に納入されます。

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製薬メーカーが医療機関に直販するわけではないというのが日本独特と言われており、欧米ではメーカーからの直販が主流だそうです。

 

昔は医薬品卸は特定の製薬メーカーの商品しか扱わない場合が多く、その分卸会社も数多くありましたが、現在は合併が進んで集約化されており多くの製薬メーカーの商品をたくさん揃えている卸がほとんどです。

製薬会社から見ても最大手の武田薬品のように特定の卸に対してしか商品を供給しないというところは少数派で、どの卸とも付き合う製薬メーカーの方が多くなっています。

 

ですから、製薬会社の営業職であるMRは、医療機関に訪問するわけですが、商品自体を持っていくわけではありません。

情報を提供することで、自社医薬品を処方してもらうという目的で訪問するのです。

もちろん医薬品卸の営業担当者(MSと言います)もいて、医療機関に訪問するわけですが、商品の納入とともに医薬品情報を提供しますが、いかんせん扱っている商品が多すぎるので、詳細な情報提供はそれぞれのMRが行うことが一般的です。

 

最後に医療機関への納入価格は、卸と医療機関による交渉によって決定されます。

つまり、MRは営業とは言っても価格交渉は行えないということになります。

価格交渉は他の商売同様シビアな仕事なので、その分楽をしているともいえるわけですが、卸からの納入価格が折り合わずに自社品が納入されないということは当然起こりえます。

MRにとって自社品を納入してもらえるかは死活問題なので、しっかり交渉してもらえるようMSにも気を使わないといけません。

 

ただし、最近は調剤薬局が主流となっていることもあり医薬品の処方元である医療機関(医師)に対して力を持つMSが少なくなっているため、MRが卸に気を使うことは以前ほどはないかなあというのが現場の実感です。

DAA製剤の効果

先月の更新で取り上げたC型肝炎治療薬について、掘り下げてみたいと思います。

frontia.hatenablog.com

 

以前は、インターフェロンという注射剤を用いる治療が一般的だったC型肝炎治療ですが、現在は新薬の登場により治療薬がガラッと一変しております。

その新薬のことをまとめてDAA製剤(Direct Acting Antivirals:直接作用型抗ウイルス薬)と言います。

DAA製剤は、その名の通り直接的にウイルスの増殖を抑えることで根治を目指す治療薬です。

今までは、インターフェロンというウイルスを攻撃する物質を体内に補充することで治療していたわけですが、インフルエンザ様症状がほぼ必発しておりましたし、治療期間も6か月~1年間かかっていました。

また、ある程度の体力も必要で高齢者などは治療できなかったのが実情でした。

DAA製剤の登場によって、副作用はかなり少なくなり、治療期間も12週に短縮、治療効果もほぼ100%、しかも飲み薬ということで今まで治療できなかった高齢者を含めて格段に治療がしやすくなったのです。

 

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上図はC型肝炎ウイルスを表しておりますが、ウイルスの遺伝子配列を切ることでウイルスの増殖を抑えていきます。

NS3、NS5A,NS5Bといった遺伝子配列に作用しますが、どの遺伝子に作用をするかは各薬剤によって異なっています。

どの薬剤にも共通することは、1つの部分だけ作用してもウイルスはすぐに耐性を獲得し、薬剤が効かなくなるので、複数の部分に作用することでウイルスに対抗しています。

 DAA製剤と呼ばれるもので、ダグルインザ/スンベプラは一番早く発売されておりましたが、治療期間が24週、耐性変異ウイルスによって感染している患者さんに対しては治療効果が4割程度に落ちてしまうということでほぼ使われなくなっています。

他のハーボニー、ヴィキラックス、エレルサ/グラジナに関しては治療期間が12週に短縮され、耐性変異ウイルスに対しても十分な効果が期待できるということでこちらが現在は主流になっているというのが現状です。

 

 

新薬創出加算

前回の更新に引き続き薬価の話を。

薬価は2年ごとに薬価改定が行われ、基本的にはその度に切り下げられていくのが普通です。

しかし、それでは製薬会社の収益が上がりにくいだろうということで2012年の診療報酬改定で導入されたのが、「新薬創出加算」です。

この新薬創出加算は、各製品ごとに認可されており、対象となった品目は特許期間まで薬価が下がりにくい仕組みとなっています。

 

2012年〜ですので、比較的最近導入された制度です。

その理由としては、昔と比べて後発品の普及が一気に進み、製薬会社の収益が上がりにくくなっている時代背景が挙げられます。

開発した新薬で確実に稼いでもらって、次の新薬の開発を進めて欲しいという国の意図があるわけです。

 

詳細を下に示します。

 

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縦軸が薬価、横軸が時間(年数)を表しています。

通常の薬価推移は点線部分のイメージで、年数が経つにつれ徐々に切り下げられていきます。

それに対して、新薬創出加算の対象となっている品目は実線のように、後発品発売までは薬価切り下げが猶予され、後発品発売後の最初の薬価改定で今まで猶予されていた価格が一気に切り下げられるという仕組みです。

 

つまり、後発品が出てくるまでの期間は薬価が守られるのでその分稼いで下さい、ただし後発品が出たらあきらめてね、というわけです。

 

新薬創出加算の対象となるにはいくつか要件がありますが、そのうちの一つに市場実勢価(卸から医療機関への納入価のこと)が全品目の平均値よりも高いことという条件が入っています。

つまり卸が安売りをしているような品目は対象から外されます。

薬価を守るために、製薬会社は卸に安売りをしないようにお願いしている(圧力をかけている??)という状況が現場では展開されています。

薬価改定について

先日の更新で、オプジーボというがんの薬の薬価が緊急的に半額に切り下げられるという話を更新しました。

frontia.hatenablog.com

http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/11/20/235526

今日はそれに関連して、一般の人には馴染みが薄い薬価改定の仕組みについて書きます。

 

通常、薬価改定は2年に1度行われます。

特例的な薬価引き下げを除けば、卸が医療機関や調剤薬局に薬を納入する際の価格(市場実勢価格)を調査し、その価格の加重平均値消費税調整幅2%をプラスして新薬価が決まります。

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そもそも薬は「医薬品メーカー⇒卸⇒医療機関・調剤薬局⇒患者」という流通ルートとなります。

国が決めている薬価はあくまでも医療機関・調剤薬局から患者に対して提供される際の価格のことであり、卸から医療機関・調剤薬局に納入される価格は価格交渉によって決定されます。

通常は消費税抜きで薬価の85%~90%で納入されることが多くなっています。

この価格を厚生労働省が抜き打ち的にサンプル調査を行って、いわゆる市場実勢価格として、次回の薬価改定の参考値となるという仕組みです。

納入価格が薬価より高くなることはありえないので、普通は薬価は引き下げられます。

製薬会社にとって問題はどの程度引き下げられるか。

 

安売りをしている薬は次回の薬価改定で薬価を大きく引き下げられるので、薬の売り上げはよりダウンしてしまいます。

ですので、製薬会社は卸さんに出来るだけ高く売ってもらいたいと思っているのですが、一方で競争が激しい分野の薬は医療機関が求める納入価の値下げを受け入れないとライバル会社に取られてしまいます。

 

昔は納入価をどんどん下げていく傾向が強かったのですが、最近は厚生労働省の方針も影響し、納入価はできるだけ高くしようという流れにはなっています。

MR活動の監視制度

今月より、MR活動を監視するための「広告監視モニター事業」が開始されました。

実施主体は厚生労働省。

一般の方には関係ない話で恐縮ですが取り上げてみたいと思います。

 

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MRの仕事は自社の医薬品に関して、適正な情報を提供することです。

有効性はもちろん都合の悪い副作用関連の情報もしっかりと情報提供しなければなりません。

薬に関わることですから適応外使用や裏付けのない情報を提供することはご法度で、勝手にMRが資料を作成して医師や薬剤師に提供することは禁じられており、それぞれの製薬会社が責任を持って許可を取ったパンフレットや資料を用いて情報提供活動をしております。

しかし、同時にMRの仕事は営業という側面もあります。

自社医薬品が売れなければ会社から評価はされません。

MRも自社品が売るために、本来は行ってはいけない活動をやっている場合少なくないのが現状です。

 

違反事例は、内部告発や他社からの指摘によって発覚することが多くたびたび報告されています。

しかし、それだけでは不十分とそんな活動を監視するために厚生労働省がモニター制度を導入しました。

情報提供を受ける医師や薬剤師の中に協力者を潜ませておいて、違反と思わしき事例があった場合は報告するようお願いしているのです。

もちろん誰が協力者かはMRにはわかりません。

 

正直言ってMR活動はやりにくくなりますが、それはMRにとっての話。

医師の中にもMRからの情報を頼りにしている方は多いと思われますが、患者さんへの影響はほとんどないと言って良いでしょう。