糖尿病治療を変えた薬・DPP-4阻害薬①

近年、製薬会社がこぞって力を入れている糖尿病領域ですが、

きっかけとなった薬が2009年~発売されているDPP-4阻害薬という薬です。

発売以来、有用性が評価されて爆発的に使われるようになった薬で、売れるものですから製薬会社が競うように同種品を発売しております。

なぜこんなに普及したのか?

このDPP-4阻害薬の特徴は、

①低血糖が少ない

②効果はほどほどに期待できる

③1日1回~2回の服用で食事の縛りがない

④副作用が圧倒的に少ない

⑤追加併用でも第1選択薬でも使える

効果はHbA1cで約1%低下させる程度ですが、何よりも副作用、特に低血糖がほとんどおきないので、高齢者でも痩せている人でもとりあえず処方できるというのが医師たちから支持されている理由かと思います。 

DPP-4阻害薬が発売になる前の糖尿病の薬は、効果は期待できるものの、低血糖が起きたり、飲み方が煩雑だったりで、薬で血糖値をコントロールできない患者さんも結構いらっしゃいました。

そこに上記の特徴を持つDPP-4阻害薬が発売されたわけですから、売れるわけです。

具体的な薬剤名は、

1日1回:ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、オングリサ

1日2回:エクア、スイニー

 

なぜ、DPP-4阻害薬は効果が期待できるのに低血糖が少ないか説明いたします。

この薬は「インクレチン」というホルモンを活かす薬剤です。

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インクレチンは、栄養素が消化管を通過したときに分泌され、

血糖値を低下させる「インスリン」を分泌させ、

血糖値を上昇させる「グルカゴン」を抑える 働きがあります。

つまり、血糖値を下げる方向に働きます。

しかし、この「インクレチン」は体内では「DPP-4」という酵素によって働かなくされてしまうので、このDPP-4をブロックしてインクレチンを増やそうというのが「DPP-4阻害薬」なのです。

 

インクレチンを活かすことが臨床上有効な点は、

インクレチンが血糖値が高い状態のときには働き、血糖値が低い状態のときには働かない、という点です。

つまり、食後の血糖値はしっかり下げかつ低血糖は起こさないという理想的な血糖値の下げ方が実現できるのです。

次回も、DPP-4阻害薬の有用性についてもう少し書いてみたいと思います。