水しか出さない利尿薬・サムスカ
今回は、利尿薬・サムスカについて取り上げます。
この利尿薬の画期的な点は水しか排泄しない点です。
利尿薬は昔からある薬で、心不全、肝硬変などで体内に水が溜まってしまい心臓や肝臓の働きが悪くなっているときに使い、余分な水分を排泄し負荷を軽減させます。
また、降圧目的で使われることもあります。
代表的な薬はラシックスです。
従来の利尿薬はNaの再吸収を阻害することで、Na(ナトリウム)とともにNaに引っ張られる水分まで排泄させる機序でした。また同時にK(カリウム)も排泄されていきます。
NaやKは電解質と呼ばれます。
このNaやKが過度に排泄されてしまうと、低Na血症や低K血症となってしまい最悪心停止を起こしてしまいます。
この点が今までの利尿薬の問題点でした。
サムスカはこの問題点を解決した薬で、直接水分の再吸収を抑えてNaやKなどの電解質に影響を与えることなく水分だけを排泄することができます。
サムスカは、バソプレシンV2受容体阻害薬と呼ばれています。
作用機序はシンプルで、バソプレシンV2受容体を通って水が体内に再吸収されているのでサムスカによってその受容体を阻害することで、水の再吸収を防ぎます。
心不全や肝硬変の患者さんにとっては画期的で、発売されて6年ほどですが多くの病院で採用されております。
問題は薬価が高いこと。
通常用量の15mgで1948.4円(1日1回)と高薬価です。
3割負担の場合この薬だけで、1か月約17500円も自己負担しなければなりません。
最近の新薬は画期的だが高薬価、サムスカもその1つなのです。
PCI経皮的冠動脈形成術
循環器医が行う一般的な治療法であるPCIについて紹介します。
PCIとは心臓カテーテル治療のことで、経皮的冠動脈形成術の略語です。
それぞれの用語を解説すると、
経皮的=皮膚を通して治療を行う
冠動脈=心臓に酸素を送る動脈血管
という意味になります。
冠動脈がプラーク(脂質の塊)により狭窄してしまうと血流が詰まり、心筋梗塞などの疾患を起こしてしまいます。
その狭窄を防ぎ血流を改善するために、このPCIは行われます。
具体的に解説すると、まずは手首や脚の皮膚を通してシースという細い管を体内に挿入します。
このシースを通して、ワイヤーやバルーン(風船)やステントを冠動脈内に挿入していきます。
その後ワイヤーを挿入した後、バルーンカテーテルを挿入して狭窄部分広げます。
そして最後にバルーンカテーテルを除去しながらステントと呼ばれる金属製の網状の筒を入れて、狭窄を広げて上げることで血流を改善させます。
以上が一般的なPCI治療の流れです。
あくまでもステントを入れて狭窄を広げて上げるだけの応急処置ですので、
元々の原因となるプラークが改善されるわけではありません。
PCIを行ったから治療完結ではなく、高血圧・脂質・血糖値などの管理をしないと心筋梗塞などのリスクは高いままなのです。
心不全治療薬・βブロッカー
今回は心不全治療薬であるβブロッカーについて取り上げます。
製品名でいうとアーチストやテノーミンが主力で使われております。
βブロッカーは、アドレナリン受容体の一つであるβ受容体に作用します。
アドレナリンやノルアドレナリン等(総称してカテコールアミンと言います)がこのβ受容体にくっつくと、交感神経が亢進してしまいます。
βブロッカーを使うことで、β受容体がブロックされ、交感神経を抑制し、
心拍数・血圧・心筋収縮力が低下します。
心臓への負荷が軽減できるということで、現在では慢性心不全にはまず使われる薬となっています。
また、βブロッカーの有用性の一つにリバースリモデリングが期待できることが挙げられます。
心臓は通常楕円形をしておりますが、心不全が進んでくると円形に変形して、うまく収縮ができない形になってしまいます。
この心臓の変形のことをリモデリングと呼ぶのですが、一度リモデリングを起こしてしまった心臓を元に戻すことは難しくなります。
しかし、βブロッカーは一度リモデリングを起こした心臓の形を元に戻す効果が示されている点が評価されているのです。
このように心不全に対して有用性が評価されているβブロッカーですが、以前は心拍数を減らすことからβブロッカーを心不全で使うなんてとんでもないという考え方が主流だったそうです。
10年経てば医療の常識が変わっているということは良くある話なので、日々勉強していないような医師の診察にはくれぐれも注意しましょう。
心臓と腎臓のかかわり
今日は心臓と腎臓は位置こそ離れていますが、密接に関連しているという話をいたします。
心不全となり心臓の機能が低下すると、全身の血液のめぐりが悪くなりますので、代償機能として血圧をあげて循環血液量を増やそうとします。
その循環血液量の調節を行っているのが、実は腎臓なのです。
腎臓はアンジオテンシンⅡという昇圧物質の働きによって、循環血液量を増やしていきます。
つまり、腎臓は体液を増やそうとするのです。
しかし、一方で心臓は機能が低下しているので、血液が溜まっている状態となっています。
そこで、心臓は利尿ホルモン(ANPやBNPといいます)というものを分泌させて、循環血液量を減少させようとします。
つまり心臓は体液を減らそうとするので、腎臓とは矛盾したことを行ってしまうのです。
この矛盾したメカニズムが続くとやがて、腎臓の影響が強くなり、心不全はますます悪化していくことになります。
高血圧という疾患は循環器内科の先生が専門というイメージがありますが、本来は腎臓も大いに関わっています。
しかし、当の循環器内科の先生方も当然のように自分たちが高血圧の専門と思っています。
なぜなら循環器専門の医師は一般的にはプライドが高い先生が多く、自分たちを花形と思っており、腎臓内科医を少し低くみている傾向があるからだと感じます。
以上、蛇足でございました。
九州でNo1のうなぎでは??
今日は久々にグルメ情報を更新します。
熊本県の南側に位置する人吉市の「上村うなぎ」です。
地元では超有名店で、九州のうなぎ屋では一番おいしいんじゃないかと思います。
(九州のうなぎ屋を食べつくしたわけではありませんが・・・。)
写真はうな重で値段は3000円弱くらい。
少し高めではありますが、うなぎの肉厚が他の店とは全然違うし、たれもあっさりめですがしっかり味がついています。
満足度はかなり高いです。
観光客が多いと思われますが、土日・祝日は行列で1時間待ちは覚悟しておいたほうがよいかと思います。
人吉市は温泉もありますし、球磨川の急流下りも楽しめる土地です。
ぜひ、遠方の方も足を延ばして食べてみて下さい。
上村うなぎ:
左心不全と右心不全
心不全と聞くと字面から心臓が動かなくなる=死亡とイメージしている方もいらっしゃるかもしれません。
医学用語ではそうではなくて、「心臓のポンプ機能障害により全身の臓器に必要な血液量(酸素)を供給できない状態」のことを言います。
心臓の収縮機能が落ちる
⇒代償機能により心拍数を増加させて新機能を維持しようとする
⇒がんばり効かなくなり、より収縮機能が悪化
という経過をたどります。
心臓は、大きく分けて左心房、左心室、右心房、右心室の4つの部屋に分かれております。
血液は、
肺⇒左心房⇒左心室⇒全身
全身⇒右心房⇒右心室⇒肺
というふうに流れていきます。
ですので心、心臓の左側と右側のどちらが収縮力が低下しているかによって症状が変わってくるため、左心不全と右心不全に分類されています。
左心不全は、全身への血液のめぐりが滞るとともに、肺に血液が溜まっている状態となります。
そのため、呼吸困難が症状の特徴となります。
その他、動悸、四肢冷感、血尿、夜間多尿など。高齢者では、全身倦怠感、めまい(脳への血流も損なわれる)、不穏、見当障害といった症状を訴えることもあります。
一方、右心不全は、全身の静脈血が滞り、肝臓や末梢に血液が溜まっている状態となっています。
そのため、下腿浮腫、腹水貯留などが特徴的な症状となります。
これらはあくまでも代表的な症状なので、病院での検査を行ったうえで最終的な診断となります。
ご紹介したように胸の痛みや動悸だけが、心不全の症状とは限りません。
医師は患者さんからの症状の訴えである程度疾患に当たりをつけて必要な検査を実施いたしますので、関係のない症状であってもしっかり診察で伝えることが大事なのです。
血糖値スパイク②
前回に引き続きNHKスペシャルで放送されていた血糖値スパイクについて取り上げます。
「血糖値スパイク」とは空腹時血糖値やHbA1c値が正常であっても、食後の血糖値が異常に高い状態のことです。
今回は、放送でも紹介されていた血糖値スパイクの対処方法について書いていきます。
対処方法は次の3つです。
①食べる順番に気をつけろ
食事は一般的に野菜から食べると太りにくいことは言われています。
今回、それに加えて「肉・魚⇒ごはん」の順番で食べた場合と「ごはん⇒肉・魚」の順番で食べた場合の食後血糖の上がり方を比較したデータが紹介されていました。
結論、「肉・魚⇒ごはん」の順番で食べたほうが食後血糖の上がり方はなだらかになります。
理由は、インクレチンという血糖値を下げるインスリンを分泌させるホルモンが肉や魚を食べることで分泌されるので、ごはんを食べたときにインスリンが出やすい状態になっているためです。
最近では、必ずしも野菜が先でなくてもごはんさえ最後であれば血糖値スパイクは起こりにくくなるという説も出てきているようです。
ちなみにごはんだけでなく、パンや麺類、イモ類も炭水化物ですので、最後に食べるようにしましょう。
②厳禁・朝食抜き
朝食を抜きがちな人もいらっしゃるかと思います。
しかし、1日1食、1日2食、1日3食を比較した場合1日3食が最も血糖値の変動が少なかく、1日1食が最も血糖値の変動が大きかったというデータがあります。
欠食をしてしまうと、次の食事の後の血糖値が上がりやすくなってしまうのです。
③食後ちょこちょこ体を動かす
食後の血糖値が最も上がりやすいと言われている時間帯は、食後1~2時間と言われています。
運動すると体内のブドウ糖は筋肉などにエネルギーとして取り込まれて消費されるので、血糖値が上がりにくくなります。
ですので、食後に運動とまでいかなくても散歩や家事をするとか少しでも体を動かすことで、食後1~2時間の血糖値が上がりにくくなるというわけです。
以上が番組で紹介されていた対策です。
どれも意識すればそんなに難しくないのではないでしょうか?
ぜひ日常生活に取り入れてみましょう。