C型肝炎は飲み薬で治る時代
C型肝炎治療が劇的によくなっていることをご存知でしょうか。
そもそもC型肝炎とは、HCVウイルスに感染することで起こる病気です。
HCVウイルスは血液感染によって感染すると言われておりますので、握手や入浴などの日常生活によって感染することはありません。
以前は予防注射の回し打ちやウイルスチェックが十分でない輸血、血液凝固因子製剤の使用などで感染するリスクがありましたが、現在では刺青や覚せい剤注射、病院での針刺し事故などでないと感染する可能性は低くなっています。
そのため、新規発症患者は少なくなっているのが現状です。
治療に関してですが、以前はインターフェロン注射による治療が一般的でした。
インターフェロンとは元々体内にあるウイルスを攻撃する物質です。
このインターフェロンを注射で補充することにより、HCVウイルスを叩きます。
ただし、発熱などの副作用がほぼ100%起こりますし、治療有効率も40%~70%ぐらいとされていました。
治療期間が6か月から1年間かかりますので、特に副作用で苦しむ患者さんも多かったようです。
しかし、2年前にダグルインザ/スンベプラという薬が発売されました。
この薬はインターフェロンがいらず、経口薬のみで治療でき副作用が少ないという画期的な薬剤です。しかも、有効率は80%以上。
この薬によって、C型肝炎治療は格段に行いやすくなりました。
さらには、ハーボニー、ヴィキラックス、エレルサ/グラジナといった次の世代の経口薬も登場し、有効率はほぼ100%、治療期間も12週と短縮されています。
このC型肝炎の領域をみていると医療の進歩はすさまじいものです。
恩恵を受ける患者さんも非常に多いと思われます。
ちなみにこの経口剤もお約束通り高薬価。
ハーボニーの薬価は1錠54,796円もします。
12週間の治療で薬代だけで約460万円かかる計算です。
C型肝炎治療は国からの助成があるため、患者さんは月の自己負担が1万円もしくは2万円で受けることができます。
その分、保険医療ですので国や保険者の財政が逼迫することになります。
C型肝炎は、発症率が減っている疾患ですので、一時的な支出にとどまるだろうと思われるのが救いでしょうか。
インフルエンザワクチン
先週号の週刊文春にインフルエンザワクチンのことが特集されておりました。
見出しでは「インフルエンザワクチンが71人に1人しか予防できない」と煽っていますが、記事の中身を読むとだいぶ抑制的で、打つべきだという医師と打たなくてもよい、むしろ有害だという医師の見解が両論示されています。
「71人に1人」というデータは海外で発表されており、ワクチンを打った人と打たなかった人の両群間でインフルエンザへの罹患率の差を比べたところ、「1人のインフルエンザを防ぐのに、71人がインフルエンザワクチンを打つ必要がある」と結論付けられているところからきています。
インフルエンザワクチンは、子供のほうが効果がより高いと言われています。
子供は大人に比べ、以前にインフルエンザに罹ったことが少ないため、免疫がないケースが多いことがその理由です。
一方、高齢者もインフルエンザに罹ると重症化する危険性があります。
インフルエンザワクチンを打ってても、インフルエンザに罹ることは普通にありますが、打つにこしたことはないだろうというのが、この記事を読んでみた私の感想です。
見出しにまどわされずに、とりあえずインフルエンザワクチンを接種することをお勧めします。
最後に、記事ではインフルエンザワクチンを接種すると医療機関が儲かるという側面を紹介しています。
しかし、特に内科医では保険診療による収入が圧倒的に多く、インフルエンザワクチンによる儲けは微々たるものです。
誤解を招く表現だなと感じました。
オプジーボ半額に
画期的ながん治療薬・オプジーボについては以前の更新でも取り上げました。
抗がん剤1剤で年間2兆円?? - MR&中小企業診断士ブログ
http://frontia.hatenablog.com/entry/2016/08/09/145347
この薬が画期的なのは以前の更新でも取り上げたとおりなのですが、問題は薬価の高さ。
オプジーボだけで患者1人当たり年間3500万円かかると言われています。
このままでは国の社会保障財政にも影響があるということで、薬価が緊急的に半額に下げられるというニュースが先日発表されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161117-00000087-san-soci
通常、薬価改定は2年に1回行われることになっており、次回は2018年4月の改訂で薬価が引き下げられるのですが、国が待ってられないということで緊急的に来年2月に薬価引き下げ、それも半額に下げるという措置を取ることになったのです。
薬価がいくらになるかは製薬会社としては収益に直結しますので、薬価引き下げに対して販売会社である小野薬品だけでなく他の製薬会社も反発しています。
今回のように例外的な薬価改定が今後も行われていくと、他人事ではないからです。
そもそも薬価とはどのように決まっているのでしょうか。
以下の2つの決め方があると言われています。
①類似薬がある場合は、その薬の薬価を参考に同じくらいの薬価がつけられます。
(海外での販売が先行している場合、海外での薬価も参考にします。)
②類似薬がない場合は、開発費・製造原価などに利益を加算して薬価がつけられます。
オプジーボは②の決め方になります。
薬価が高額になった理由は、まず開発費が多くかかっていること。
そして、承認当初は想定患者が少ない悪性黒色腫(皮膚がんの一種)の適応で利益を確保するため高い薬価がつけられました。
しかし、去年12月に肺がん、今年8月には腎細胞がんにも適応が拡大されたため、想定患者が一気に増え国も無視できなくなってしまったのです。
今回はこのように特殊事情があるので、緊急的な値下げもやむを得ないでしょう。
製薬会社も表向きには反対していますが、本音ではそう感じているはずです。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤について今回は取り上げます。
下肢静脈瘤では、以下のように脚の血管が浮き出ているような症状が出ます。
立ち仕事をしている女性に多いと言われていますが、良性疾患なのですぐに危険がおよぶわけではありません。
そもそもの話からですが、血管には動脈と静脈があるのはご存知かと思います。
簡単に言えば、動脈は心臓から血液を全身へ運ぶための血管、静脈は全身の血液を心臓の戻すための血管です。
静脈には動脈にはない弁がついていること、動脈性疾患は血管そのものが狭窄したり詰まったりする疾患が多いのに比べて、静脈性疾患は血栓ができその血栓が様々な血管に飛んでいくことで引き起こされる疾患が多いのが特徴となります。
静脈の構造を見ていきましょう。
以下の図のように静脈には、深部静脈と表在静脈があります。
血液は深部静脈を通って、心臓に戻っていきます。
深部静脈は脚の中心部を通っているのに対して、表在静脈は深部静脈から枝分かれし脚の皮膚表面の近くを通っています。
静脈性疾患で、命に関わるのは深部静脈です。
深部静脈で血栓ができてしまうと、肺動脈に飛び肺動脈を詰まらせる肺血栓塞栓症(PTE)などを引き起こしてしまい命の危険が起こります。
一方、表在静脈はすぐには命には関わりません。
下肢静脈瘤は表在静脈に関連する疾患なので良性疾患と言われるのです。
とは言っても、表在静脈にできた血栓が深部静脈に移動してしまうこともあります。
見た目以上に過度に心配する必要はないですが、病院で診察してもらってケアすることは大事でしょう。
高安病
日本人の名前がついている疾患は珍しいのですが、その1つが高安病です。
英語表記でも、「Takayasu arteritis」となっています。
現在の金沢大学医学部の眼科教授であった高安先生により、脈が触れず虚血性網膜症をきたす疾患として、報告されたため、この名前が付いています。
(高安右人先生)
どんな疾患かというと全身の動脈に炎症が起こり様々な症状がおこる疾患です。
原因は不明と言われていますが、自己免疫疾患によるものと考えられています。
また、特に日本人の若い女性に多いと言われております。
どんな症状が起こるか以下にまとめてみます。
一部の動脈だけでなく、全身の動脈に炎症が起きてしまうので、症状も多岐にわたります。
・脈が触れない
・血圧上昇
・血圧の左右差および下肢・上肢の差
・めまい、頭痛、失神
・失明
・狭心症・心筋梗塞
・発熱
・動脈瘤の形成
治療は、ステロイドや抗血小板薬による対症療法が中心です。
狭窄がひどい場合は外科手術やPTA(経皮的血管形成術)が行われます。
このように非常に厄介な疾患ですが、
他の疾患と同様、早期発見によって予後はだいぶ良くなります。
特効薬はない現状ですが、診断技術も進歩しているので、日ごろの健康診断をしっかり受けることがやはり重要なのでしょう。
鹿児島・行列のできるパスタ屋
本日のグルメ情報は、鹿児島のパスタ専門店「ダローロ」を紹介します。
場所は鹿児島市内の繁華街・天文館の商店街。
この店はランチのみの営業になりますが、開店前から行列ができるほどの人気店です。
価格は1000円~2000円程度と少し高め。
種類は10種類以上ある中で、注文したのは「茄子とパンチェッタ(ベーコン)のトマトソース」のパスタです。
麺はもちもちですし、味付けは抜群。
あっという間に食べきってしまいました。
また、パスタ以外にもスープとバウニャカウダがついてきます。
このスープとバウニャカウダがまたおいしい。
鹿児島市内にはそんなにパスタ専門店はないので、貴重なお店です。
ぜひ、一度お立ち寄りを、と言いたいところなんですが、
実はこのお店今年一杯で移転してしまうそうです。
しかも移転先では喫茶店として営業するとのこと。
人気店ですので、大変もったいない気もしますがこればっかりは仕方ありません。
12月30日までは営業しているようですので、行ける方はぜひ行ってみて下さい。
「ダローロ」
抗血小板薬と抗凝固薬
今回は、抗血小板薬と抗凝固薬について取り上げます。
どちらも、血液をサラサラにする薬ですが、作用するポイントが違います。
血液が固まる過程は以下の2つがあると言われています。
①血小板血栓が作られる
②フィブリン血栓が作られる
①血小板血栓に対しては抗血小板薬、②フィブリン血栓に対しては抗凝固薬が使われます。
では詳しく見ていきましょう。
抗血小板薬
血小板は動脈のような血液の流れが速くなっている場所で血栓になりやすいと言われています。
特に動脈硬化が進んでいると血栓が作られやすくなります。
高血圧や脂質異常症の方は注意しなければなりません。
そして血栓ができると、脳梗塞や心筋梗塞の原因になってしまいます。
このような動脈硬化に代表される動脈疾患に由来する血栓を予防するために使われるのが、抗血小板薬となります。
代表的な薬剤としては、プラビックス、パナルジン、バイアスピリン、プレタールなどがあります。
抗凝固薬
フィブリン血栓は血小板血栓の違い、静脈で作られやすいと言われています。
例えば心房細動などで心臓のポンプ機能が低下すると血液の流れが滞ってしまい、血栓が作られます。
フィブリン血栓は、血小板血栓に比べて大きくなりやすく、脳や心臓の血管に飛んでしまうと致命傷になりやすいので特に注意が必要です。
有名なエコノミー症候群なども同じ原理となります。
代表的な薬剤としてはワーファリン、プラザキサ、イグザレルトなどがあります。
以上の薬は、循環器疾患に罹ると高い割合でお世話になる薬です。
どうぞご参考にしてください。